なおなおのクトゥルフ神話TRPG

クトゥルフ神話TRPGを中心として、ゲーム関連の話題を扱っていきます。


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【第18回】短編小説の集い短評 その2

こちらの作品の短評その2です。

そこまで長くはなっていませんが、余裕を持たせるという意味で2つずつ2回に分けて短評を書いていきます。今回は、その2回目です。

こちらは鳥カフェに行ってきたところを身動きができなくなっているアキラに話をしている話です。鳥の自由さと病院で身動きできない主人公を対比させつつも、結局自由に見えている鳥も建物という世界の中だけの自由と言う意味では、大して変わらない、という皮肉めいた印象を与えています。

そういった意味では、非常に作品としてのレベルは高いと感じました。ただ、主催者の方が評しているように、いっそのこと鳥の話の部分とアキラの感情の部分は切り離して書くとメリハリは出るような気がします。その中で、その落差を広げるためにも、アキラの状況の経緯や展望的なものを匂わせるような記述があると、より良かったと思いました。ここは、アキラがどういう状況かを正確に把握できていませんので、正しくない可能性もありますが、例えば、読者に想像して欲しいような流れに持っていくのであれば、「今となっては遥か昔のことで、自分が動けなくなった原因を思い出すことすら叶わないが、こうして、延々と身動きできないまま、短くて長い一生を終えることになるんだろうな、と薄ぼんやりとした頭で考えていた。」のようなこと最期にでも入れておくと、読者に想像することを促すことも可能ですし、唐突感も薄らぐのではないかなと感じました。

祖父の飼っていたオウムと祖父に懐いていた主人公のお話しですね。こちらは過去作との関連が深く、過去の作品を読んでいると、なるほど、という感じになるかなと思います。それとは別に、一人暮らしの気ままさと、その気ままな生活を支えるための基盤の存在を示唆しているのは、なるほどと思わざるを得ませんでした。

個人的な印象になるのですけれども、「首にタオルを巻いていると騒ぐオウム」ってミステリーで言う「実は他殺でした」って展開に思えてしまいます。(自分だけだと思いますが)

祖父は死んだけど、実は両親に自殺に見せかけて殺されていて、それを見ていたオウムが騒ぐと、それを娘に追及されて困ってしまっていたり、証拠隠滅のために殺処分を検討したりとしているようにも見えてしまいました。まあ、実際には違うんでしょうけれども。

ただ、逆にそういった印象を持つことができるというのは、物語の世界にうまく入っていけているということなので、こういうのが、読者を引き込む作品なのだなと感じました。