少し間が空いてしまいましたが
こちらの残りの作品についても感想を書いて行きたいと思います。
一応、最後に自分の作品の振り返りについても書いておきたいと思います。
地底人の女性とある船乗りとの恋の話ではありますが、他の作品と異なり、恋の病というわけではなく、地底人が地上で活動することによる病気、いわゆる環境病のようなものを主題としたものでした。
オチはエピローグを実際に読んでもらった方が良いと思いますので割愛しますが、平文にある主人公の心の声のようなものと状況説明が混ざっている感じでしたので、この辺りを改行などで区切ると読みやすくなると感じました。
また、文字数がオーバーしてしまったということでしたが、主人公の心の声などの主観的な部分を客観的な表現に変えることでだいぶ削れるかなという気がしました。
また、構成的には非常にいい感じだとは思いますが、時間を遡らせたり、遡った時間から現在に戻ったタイミングで一言あると、読んでいて迷いが無くなるかな、と感じました。
被害者のトラウマによる加害に対する問題提起がされている作品だと感じました。
現代の法律というのは、基本的に被害者にとって不利になるようにできているのですが、その問題に心の病という切り口から問題を投げかけている点は非常に深いものを感じます。
被害者の視点で見れば相手の方が自業自得なわけですが、それを罪としてしまうことに、本当の被害者に対して救いをもたらすことのできない現代社会の矛盾のようなものを感じました。
同じ病気で入院している二人の男性のお話ですが、作品の中に描かれているのは2つの病気でした。
一つは入院の原因となっている病気、もう一つは悪い癖という病気。
その2つの対比が良い味のオチを作り出しているような感じでした。
その辺の話がテンポよく流れていく感じは、さすがにたくさん書いているだけはあると感じました。
ただ一点だけ、途中で小杉さんが結婚している、という話の伏線が、どこに繋がっているかが最後までわかりませんでした。この時に、実は男性だと思っていた主人公が実は女性で、既婚者といい関係になってしまうことを警告しているのかも、みたいなことも考えてしまいました。
喘息持ち、と言っても咳喘息ではあるが、で趣味で小説を書いている男性のお話しです。
途中、男性の実体験を元にしたと思われる小説の内容が描かれていますが、シチュエーションが似通っているせいもあり、独特な感覚を受けました。
もっとも、喘息と異なり、咳喘息は症状こそ酷いものの、命を落とすまではいかないため、そういった意味では病気といえども、そこまでの深刻さはないという点ではテーマとしての選択も絶妙だと感じました。
症状に関しては同じくらい酷くなる点も踏まえると、喘息で命を落とした父親の姿と自然に重ね合わせられる点も良いと思いました。やや淡々と描かれすぎな気もしなくもないですが、これはこれで病という特質を印象付けるにはいいのかなと感じました。
自分の作品の振り返り
今回の私の作品は、最近読んだ作品で叙述トリックが使われていて、面白そうと思ったのがきっかけで今回のような作品にしてみました。
ちなみに、こちらがその作品です。
とはいえ、この作品みたいにきれいにトリックが描けていないのが、自分の力不足なところを感じました。
話を戻して、今回の作品は2つの勘違いを組み合わせてトリックにしようとしています。
一つは「病」そのもので、本来であれば「恋の病」が原因なのですが、「呪いによる病」であるかのような表現にしています。もちろん、主人公は原因を知らないわけですので、呪いかもしれない、と感じていたりもするわけです。
これは他の方の作品でも似たような感じになっていますので、すぐに気づいてしまうかと感じました。
もう一つは、肝試しに行った相手の「性別」です。これは「恋の病」から意識を逸らさせるためのものです。ちゃん付けでの愛称に加えて、似たような愛称を持つ女性の登場、そしてダメ押しで紛らわしい形で愛称を主人公が呼ぶという感じで、本来の相手とは別の人物と誤認させようとしました。
もっとも、女性の恋愛対象が男性であるという必然性が無いというのが、このトリックの最大の問題なのではありますが。
また、今回の作品はある意味で禁じ手に近いこともしています。それは地の文が主人公の一人称視点と三人称視点で時々切り替わっていることです。もっと具体的には情景描写と主人公の思考を同じように書いているため、かなり読みにくくなってしまっていたなと思います。
今月の師走のテーマも、今プロットを考えているところではありますが、同じようにトリックを入れてみようかなと考えています。