なおなおのクトゥルフ神話TRPG

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【第17回】短編小説の集い「月に誘われて」振り返り

今回は月というテーマだったので

テーマはあんまり関係ないかもしれませんが、久々に(初めて)クトゥルフ神話らしいホラーめいた小説を書いてみることにしました。もともと自分の好みからすると、ホラーよりはミステリーの方が好きだったりするので、ホラーの持つ独特の表現には不慣れな面もありました。

一応テーマとしては月になじみの深い狼男(人狼)という怪物を題材にしました。もっとも、狼男が感染するかしないかというところも、世界観によって異なったりします。この点は吸血鬼に近いものがあります。

元々、これらの怪物は伝染病がもとになっており、それが感染するという根拠になっています。人狼の場合は言わずと知れた狂犬病ですが、この話も、その狂犬病由来の特性を持った人狼ということになります。

この話が裏に持つのは、自分の意思によらず変えられたことに対して嫌悪や憎悪を抱きつつも、それから逃れられない宿命のようなものを抱えて生きていかざるを得ない現実を表現しています。その意味では、主人公は今の日本人の暗喩と言えるのかもしれません。一応、主人公の名前も考えてはありますが、今回、意図的に名前を出さなかったのは、そういった意味合いもあります。

今回のテーマとしてタイトルを選んだのですが、タイトルのロマンティックさに比べて中身がややグロい感じになっているのは、書いてから若干やばいかも、と感じました。もっとも、杞憂だったのかもしれませんが。

今回もこちらに感想をいただきましたが、とても参考になります。もっとも、今回は狂気の表現を抑えめにしてあるのは、無意識に狂気をセーブしていたというのは確かにあるかと思いますが、それよりも、先ほどの主人公の葛藤と抗いきれない現実を表現することに主眼を置いてしまったため、という側面もあります。

ただ、改めて指摘されて、葛藤と現実の落差を際立たせるためにも、もう少し狂気的な描写があっても良かったかなとは感じました。今回は字数としても短めだったので、字数的な余裕はあったわけですし。その辺の補強はあっても損はなかったかなと思いました。

こちらの感想を見て思ったのですが、やはり、変身(もちろん不可抗力)したときに凶暴化してしまうところの描写が目立つのと、月のイメージから狂気的なところを連想させてしまっているのだなと痛感しました。

この辺りが、満月の晩になると無意識に他人を傷つけてしまうことに対する葛藤をうまく印象付けるのは難しいなと感じました。主人公が満月の晩に人気のない公園にいるのも、距離を置くことで他人を傷つけたくないという意識の表れを表現したかった、という部分もあります。

もちろん、これまでは好きであった月によって身近な人間を傷つけてしまったということから月を嫌いになったという事情や、あの晩に同じように人気のない公園で出会った警察官も同じように人を避けていたんじゃないかと言うところ、そして、本当に運命を受け入れて共存するには、転校していった女の子のように人が本当に少ないところに引っ越すしかないといった、背景的なところを、どうやって示唆するか、と言うのは難しい問題だと感じました。

その点については置いておいたとしても、書いている時は結構きつい描写だなあと思っていた主人公が両親を殺してしまう描写ですが、実際の感想を聞いてみると物足りない印象を与えていたことは、かなり意外でした。そう考えると、もっと詳細に描写した方がよかったなと感じました。

あと、確かに指摘された通り、一人称にしてしまった方が、読者に当事者としての切迫感なども感じさせやすくなることを考えると、それもよかったなと感じました。